「直ちゃんが私に言ってくれたように、これは、純からの直ちゃんへの時を超えた手紙です。
 直人が僕を探しにここに来てくれた時に渡してって……
 あ~ でもこうやって、直ちゃんにちゃんと渡せる日が来て良かった。
 これで純も救われるし、直ちゃん、あなただって救われたはず……
 何も二人にはわだかまりはないのよ。
 自信を持たなきゃ……」

 和美は一人でベラベラ喋っている事に気がついた。直人はその封筒を手に持ったまま、一点を見つめている。

「直ちゃん、その手紙は読みたい時に読めばいいんだからね……
 心に安らぎが戻ってきてからでもいいし、息詰まっている時でもいい。
 自分のタイミングで読んであげて……」

 明るく振舞う和美を見ていると、直人は涙も出てこなかった。もう和美の前では泣きたくない。
 そして、直人は、この純からの手紙に心が震えていた。
 あの時、ここに来ようと思った理由が今なら分かる。それは全てが偶然のようで、必然の出来事だった。
 直人は、ただ単純に、純が恋しかった。そして、その想いは純も同じだった。
 二人にとっては当たり前の引力が、二人をまた元のさやに戻してくれた。ただそれだけの事だった。