和美は車を駐車場に入れず、駅のローターリーの隅に止めた。
「直ちゃん、すずちゃん、ここでいい?」
和美がそう言うと、一番先に佑都が車から降りた。
「母さん、もうちょっとだけ時間ある?
電車の時間もまだ先だよね?
そこのお土産店まで、すずちゃんと行きたいんだ。すぐ帰ってくるから」
すずはバツが悪そうな顔をして車を降りた。
「すみません… いいですか?
佑都君が可愛い小物を置いてる店を知ってるって言うから、ちょっと行きたいなって思って……
直人は? どうする? 一緒に行く?」
直人は車に乗ったまま、「行ってきていいよ」と笑顔で送り出した。
すずと佑都は楽しそうに店へ向かって歩いて行く。直人と和美はそんな二人を見て、顔を見合わせて一緒に笑った。
「直ちゃん、ちゃんと捕まえてなくちゃ、佑都がすずちゃんを取っちゃうよ」
和美は後部座席に座っている直人に向かって、ミラー越しにそう言った。
「い、いや……
俺達、そんな仲じゃないんですよ……」
直人は嘘はつけなかった。まだすずとはちゃんとつき合ってるわけじゃない。
「じゃ、今からそんな仲になっていくのね……
お似合いの二人じゃない。純のためにもあなた達二人は、いつまでも仲良しでいてね」