直人はとにかくお腹が空いていた。昨夜の夕飯もろくに食べていなかったせいで、和美の作ったご馳走を何杯もおかわりをした。
 和美はそんな直人の事を優しく見つめる。
…昨夜、純の部屋に泊まった直人に何があったのだろう?
 本当は聞きたくてうずうずしたが、今はやめておく。直人がもう少し大人になって、その出来事を笑って話せるようになってからで全然構わない。
 純と直人は、どういう形でかは分からないけれど、必ず再会していると、和美は確信をもってそう思っている。
 昼食を済ませた後、和美は皆に手作りのケーキを出した。

「ちょっと早いけど、直ちゃんのバースデイケーキ」

 四月になれば、すぐに直人の誕生日がやって来る。
 直人が幼い時は、純のお母さんの手作りケーキが定番だった。

「懐かしい……
 それより、俺の誕生日を覚えていてくれてありがとう」

 和美は静かに微笑んで、そのケーキを皆に取り分けた。

「あ、おばちゃん……
 あの手紙、気づいてくれた?
 純の手紙を、俺、このテーブルの上に置いてたんだ。
 タイムカプセルに入ってた純からのおばちゃんへの手紙……」