すずは直人の顔を見て心底ホッとした。自分を責め続ける苦悩に満ちた直人の顔は、もうそこにはない。
 直人の中で何かが変わった。すずはそう感じていた。
 それは小さな変化でもいい。純の死を受け入れ、少しずつ前を向いて歩いてくれればそれでいい。
 直人の柔らかくなった表情は、確実に前を向いている。
 そして、すずは急に立ち上がった。

「純~~~、聞いてる~~~」

 すずだって純に話したい事がある。今を逃せば、もうこんな機会には巡り合えない。

「私も純に話したい事があるんだ……
 でも、きっと、もう純は分かってるんだよね。
 それでも、ちゃんと純に伝えたい……」

 直人は急に大声で叫び始めたすずを驚いて見ている。

「純、私は…
 私はずっと直人の事が好きだった……」

 すずの思いがけない告白に、直人は言葉を失った。

「でも、純には好きな人はいないって嘘をついてた。
 あの時の私は、臆病で怖がりで、直人を好きだって言ってしまったら、純も直人も私の前からいなくなるって思ってた…
 勘がいい純は、私の心を見透かしたような顔をしてたよね。
 何度も直人だろ?って聞かれても、絶対違うって嘘をついてた」