直人は川の前で立ち尽くしている。
 すずはそんな直人を息をひそめて見ていた。物音をたてたくない。だって、今、直人は純と向き合っている。この純と直人の尊い時間を邪魔したくない。

「純… 俺は…
 あの六年前、純と過ごした最後の日にどうしても素直になれなかった……
 クラスの皆やたくさんの友達が、純に手紙やプレゼントを持って別れの挨拶に来たときも、俺は部屋から出ないで窓から外ばかり見てた……」

 直人は歯を食いしばり拳を力強く握った。自分が悔しくて情けなくて、涙だけがこみ上げる。

「純が…
 もう、出発する頃に俺を呼びにきてくれたんだよな…
 純、本当は……
 純に渡そうと思って、あの時手紙をずっとポケットに入れてた…
 ふてくされて意固地になってる俺は、純に何も言えない、だから、手紙には純の事が大好きだって書いたんだ。
 いつまでも俺の親友だって……
 でも、その手紙もバカな俺は渡せなかったんだ……
 さようならも、ありがとうも、何も伝えられないまま、純は居なくなった…」

 直人は大声で叫んだ。