直人はまた上を見上げた。どこかに鳥はいないだろうか、小さな動物でもましてや虫でもいい、何かを見つけて純の存在を感じたかった。

「直人はどう感じたの?
 もし、本当に純が自分の目で見た事を直人に見せてくれたのなら、直人に何かを分かってほしかったからじゃないのかな。
 直人、いいな…
 私も純に会いたかった……」

 直人は昨夜の不思議な出来事をもう一度思い出してみた。
 すずの言葉で少しは冷静になれた自分がいる。
 純が直人にそこまでして伝えたかった事をはっきりと感じ取りたい。でも、きっと、悔しさや悲しさが直人の全てを支配している間は、答を導き出せない事も分かっている。
 その純からのメッセージには、今の直人にとって一番大切で必要なものが詰まっている。

「純は何も言ってくれなかったから……
 でも、たくさんのものを俺に見せてくれた。
 一番不思議だな~って思ったのが、最初に純の家の屋根に座っている時に見えた俺達なんだ。
 多分、俺とすずだった。
 この家に向かって歩いている二人の姿だった」

 直人は頭の中で断片的に残っている記憶のピースを必死に合わせてみる。