すずも直人の隣で空を見上げた。
 空を覆う緑の木々は太陽の光を遮りながら、風の行く方向へざわざわと音を立てている。

「すず、最後に純が俺に見せてくれたのは、あの日の俺達だった」

「あの日?
 俺達って、また私もいたの?」

 直人はすずの肩を抱き寄せた。すずの温もりを感じていなければ、自分の居場所が分からなくなってしまいそうだった。

「すず……
 あのタイムカプセルをクラスの皆で掘った日に、純も来てたんだ。
 純は鳥や風や何かの姿になって、上の方から俺達を見てた」

 すずは泣くのを必死に堪えた。純が嬉しそうにすずに笑いかけている。すずはそんな気持ちになっていた。

「あの日は皆で純の話をした。
 クラスの皆が、純は来ないの?って純の事ばかり言ってた。
 純に会いたかった~って……」

 直人は穏やかな表情ですずの話を聞いている。

「純には全部聞こえてたんだ……
 皆が純に会いたがってるって事も、ちゃんと伝ってる。
 俺は風に乗って高い所から皆を見てた。
 きっと、それは純の目から見た景色なんだ。俺は純の気持ちになって、あの日の俺達を見てた…」