直人の顔は笑顔に変わっていた。

「最初は、今の、ここの純の家の屋根に座ってたんだ。
 そこから、俺と純の時間旅行が始まった。
 それでその次が、なんと、俺達の通ってた中学校の体育館の屋根の上。
 中学生の頃の俺もいたし、すずもいた……」

 すずは飛び上がるほど嬉しかった。
 直人の話がどこまで真実なのかは分からないけれど、それでも純と直人の二人の空間に自分が出てきた事は心が躍るほど嬉しかった。

「嬉しい。
 純は私の事を忘れてなかったんだ……」

 直人は寂しそうな目ですずを見つめ、首を横に振った。

「忘れるはずないだろ……
 中学生の時のすずはめちゃくちゃ可愛かった。
 純だってそれはちゃんと分かってるよ」

 すずは小さく頷いた。

「中学生の私達は何をしてたの?」

 直人は一瞬不思議そうに考え込んだ。

「普通の生活……
 俺はグランドで友達とサッカーをしてて……
 すずは、よく分からないんだけど、そんなグランドにいる俺をずっと見てた」

 すずはドキッとした。
 …純は知っている。私が直人を好きな事を。
 すずの直感は、すずの心を動揺させた。