すぐにあの光のもとに行きたかった。
 直人はジャケットを持って部屋を出ようとした時、自分のリュックからファイルに挟んだ手紙が出ている事に気づいた。直人はとっさにそのファイルをつかんだ。
 タイムカプセルに入っていた純の手紙を和美に渡すためにここへ来た事を、直人は忘れていた。そんな大切な用事を思い出したはずなのに、それでも、直人の気持ちは焦っている。
 …早く行かなきゃ、純がいなくなる前に。
 直人はまだ誰も起きていないリビングに行き、純からの手紙をテーブルの上に置いた。和美に純の手紙を真っ先に気づいてもらうために、置手紙を書いた。

“おばちゃん、純からの時を超えた手紙です
俺はちょっと川まで散歩に行ってきます  直人より”

 直人は静かに玄関を開けて外へ出た。太陽の柔らかい光と身を切るような冷たい空気が、直人の肌を交互にくすぐる。
 直人は一目散に駆け出した。あの森の中の川の近くで純が待っている。
 直人は純の何かを感じたくてうずうずしていた。もう昨夜のような出来事は起こらないと分かっていても、純に会いたくてたまらない。
 直人は川へ続く階段を駆け下りながら、必死に祈った。
 …純の姿が見たい。神様、一目だけでいいから、純の姿を俺に見せて下さい。