直人は深い眠りから目覚めたようなそんな気分だった。目をこすりながら、自分がどこにいるのか確認してみる。
直人は、純の部屋のベッドの脇の床の上に寝ていた。
「純……」
直人は起き上がる事もせず、ただ、真っ直ぐに天井だけを見ていた。窓は開けっぱなしのままで、朝方の凍るほどの冷たい空気が部屋の中を漂っている。
直人は体の力が全部抜けていた。きっと直人の魂は純の魂を追いかけて、この体から抜け出したに違いなかった。
直人の魂は自分の体に戻ってきたけれど、純の存在はもう近くに感じられない。
「純……」
直人は何度も純の名前を呟いた。でも、それは虚しく冷たい空気に漂うだけで、純の気配はもうここにはない。
さっきまでの夢のような出来事は、一体何だったのだろう。
直人は純が直人に見せてくれた一つ一つ場面を、もう一度頭の中で思い出した。
そして、直人は立ち上がり、窓から外の景色を見てみた。そこに見える景色はもう薄紫色じゃなかった。朝日が昇り始めた空は、青く金色に輝いている。
「あっ……」
直人は川に続く森の中に、また、あの小さな光を見つけた。