直人はすずに何も聞けずに黙っていた。すると、それを察した光太郎が、すずの顔を覗きこむように率直に質問をする。

「すずは行けそう?
 直人と二人になっちゃうかもしれないけど」

 すずは直人を見ながら、迷いなくこう答えた。

「私は行く。
 純に会いたい…
 会って、大人になった直人と純のコンビをまた見てみたい」

 直人はすぐにすずの視線を外した。
 …すずは俺と行く事なんかどうでもいいんだ。大人になった純に会いたいだけだろ? すずは純の事をずっと好きだったから。
 直人は、そんな事を考える自分にうんざりしていた。体は大きくなっても、心は何も成長していない。すずを愛する気持ちが、直人の思考をおかしくする。

「じゃ、本当に悪いけど、この純への手紙は二人に託す。
 ま、純だって、もしかしたら大学でこっちに出てくるかもしれないしさ。
 近況が分かったら教えてよ。その時はまた五人で集まろうぜ」