直人はあの日の純を思っていた。
 あの日、六年二組の仲間が久しぶりに集まった。懐かしい思い出話に夢中になる中、誰一人、純が死んだなんて思わない。
「手紙が届いてないのか、手紙を読んでないのか、純の事だから忘れてるんだろ」と、皆そう思ってた。
 でも、純はこうなる事を望んでいた。
 今でも皆の心の中に、元気でやんちゃな人気者の純がいる。
 クラスの人気者で皆に愛されていた純を忘れるなんてあり得ない。それは、どれだけ歳を重ねても変わる事はない。
 皆、純の事を愛しているし、純の存在は皆の記憶の中に確実に残っている。
 直人は不思議と答えを見つけたような気がした。
 純の姿はもう見えないけれど、純の魂を感じながら生きていく。純と一緒に生きていく。

 すると、直人が乗っていたはずの風がピタッとやんだ。
 大きな空で置き去りにされた迷子のように直人は必死に純を捜した。
 直人は見えない何かを掴もうと、必死に手を伸ばす。その時、直人の手を誰かがギュッと掴んだ。温かく柔らかいその感触は、直人の傷ついた心を一瞬で癒してくれる。

「純…」