…純はこの場所から俺達を見ていたんだ。
直人はせんだんの木の一番上の細い枝に座っていた。そこに座るなんて、現実ではあり得ない。
直人は、今、自分がどいういう状態なのか疑問に思った。180㎝の大男がこんなか細い枝に座れるはずがない。直人は座っている足をブラブラと揺らしてみた。
「え?」
直人はここにいる自分が物体ではない事に気付いた。その時、遠くで純が笑っている気配を感じその方向に体を預けると、直人の体は風に乗って空へ舞い上がった。まるで鳥にでもなったみたいに、木の枝や葉っぱの間を自由自在に飛び回る。
そして、今度は、せんだんの木の一番下の枝に止まった。下を覗くと、六年二組の仲間達が必死にタイムカプセルを掘っている。先生もいる。光太郎も真子も、可愛いすずも、少しだけ寂し気な顔をしている自分もいた。
直人はまた上の方へ飛び上がった。何か分からない大きな力を借りて、上へ上へと上っていく。
…今度は風だ。
今、直人は風となって、広大で永遠の空を飛びまわっている。