すると、いつの間にか、あの黄色い小さな光が直人の手の平に止まっていた。直人は優しく微笑んで、またその小さな光を手の中に静かに包み込んだ。
すると、また何かに引っ張られる不思議な力で、直人は無重力の中で一回転したような感覚に陥った。頭をクラクラさせながら目を開けると、今度は全然違う景色が見える。
「ここはどこ?」
薄紫色の世界に見慣れた光景が広がっている。直人は目を凝らし、その景色を見渡してみた。見ている角度のせいで分かりづらかったけれど、よく見てみるとそこは直人の通っていた中学校のグランドだった。
「俺は中学校の体育館の屋根に座ってる?」
半円状になっている体育館の赤い屋根を思い出した。今、直人がいる場所は体育館の屋根のてっぺんだ。直人はその景色の壮大さに感動し、立ち上がり背伸びをしながら手を伸ばした。星にさえ手が届きそうだ。
校舎やグランドを見回してみると、幼かった中学生の頃の自分やすずが見えてくるようだった。
あの頃、昼休みになると校庭に飛び出して、仲間達と毎日サッカーをした。可愛いすずは、男子の先輩からよくラブレターをもらった。この頃の直人は、すずを好きな気持ちをひたすら隠していた。いつも遠くからすずを見つめる日々だった。