直人は、しばらく寝転んだままその光をずっと見ていた。黄色い光は、明るい部屋に入ってきたせいで輝きを失っている。
 直人は起き上がり壁に付いている電気のスイッチをオフにした。すると、暗闇になったその部屋で黄色い光は楽しそうにプカプカ浮いている。窓はすぐそこにあるのに出て行こうともせず、純の部屋で上下に揺れていた。
 純の部屋は、大きな窓から差し込む月明かりのせいで、薄紫色の不思議な空間になっている。直人はその光の美しさに魅せられて近づいてみた。でも、その光は逃げも隠れもせずにその場で楽しそうに踊っている。
 よくよく見てみると、その光はほたるではない事に気づいた。直人の全ての神経が一瞬で目を覚ました。
 …純だ。
 直人は無意識の内にその光に更に近づき、顔を寄せて目を凝らして見た。直視すれば眩しすぎて目が閉じてしまう。
 直人はその光の下に両手を伸ばしてみた。それでもその光はプカプカとリズムよく浮いている。

「純だろ?」

 直人は小さな声で囁いた。
 すると、その小さな光は直人の両手の中に入ってきた。直人はそっとその光を両手の中に閉じ込めた。
 そこからは先は、何が起こったのか直人には分からない。夢なのか現実なのか、きっとその狭間で直人は純の存在を感じていた。