直人は純の部屋に戻ると、窓を開けて冷たい風を部屋の中に入れ込んだ。ベッドに腰かけて頭を抱え込む直人を、外からの冷たい空気が優しく包み込んでくれる。
 もう、涙も枯れ果てた。純の力になれなかった事が悔しくて悔しくて、後悔の気持ちが刃となって自分の心を傷つける。
 直人は、自分が未来を生きることさえ後ろめたかった。
 大切な人を亡くした今、自分の生きる道さえも見失ってしまっている。それだけ直人にとって純の存在は大き過ぎた。生まれてからずっと隣にいた親友は、直人の事を思い一人でひっそりとこの世を去った。この悲しすぎる現実は、直人から生きる活力を奪っていく。
 直人はただ茫然と冷たい夜風にあたって、ぼんやりと一点を見つめていた。
 すると、窓の向こうの森の方で異変を感じた。
 直人はベッドから立ち上がり窓の方へ行ってみると、真っ黒い闇の森に黄色い小さな光がプカプカと浮いている。
 …ほたるか?
 直人はそう思うとまたベッドに戻った。今度はベッドに寝転がり、眠る事もできずにずっと天井を見つめていた。すると窓から強い風が入ってきて、一気に部屋の中の温度を下げる。

「あれ?」

 黄色い小さな光が風に飛ばされたのか、一つだけ、この部屋の中でプカプカ浮いている。