直人は佑都の部屋の床に座り込んだ。あまりにも苦しくて切なくて、身体が引き裂かれそうに痛くて悔しい。
「兄ちゃんは左足を切断した……
ガンの転移を極力少なくするために。
直人兄ちゃんだけにはその事を知ってほしかったんだ。
母さんは、まるで兄ちゃんが弱虫みたいに船橋の友達に病気の事を知られたくなかったって言ってたけど、でも、本当はそんなんじゃなかった。
この足を切断する時だって、病気をやっつけるためだって言ってた。病気さえ治れば見た目なんか関係ないって、そんな事俺は気にしないって。
船橋の友達に連絡する事はなかったけど、兄ちゃんはいつも前向きだった。
僕はまだ小さくて、でも、兄ちゃんが一生懸命に生きているのは見てて分かった。
足を失くした事にくよくよする事もなく、苦しい治療にもたえて生きるために必死だった……」
純は佑都の心の中で生きている。そして、純が病気と闘う姿は、佑都の魂に深く刻まれていた。
「直人兄ちゃん……
兄ちゃんは病気になってあんな若さで死んでしまったけど、でも最後まで希望は捨てなかったんだ。
直人兄ちゃんに会える日を夢見て、後ろなんか向かずに前だけを向いて生きてた。
それを伝えたかったんだ…
兄ちゃんは絶対に可哀想なんかじゃない。
兄ちゃんは、強かったし……恰好良かった……」
佑都は声を上げて泣いた。直人に会えてこの想いを伝えられてホッとしたみたいに、子供のように泣きじゃくった。