直人はそのまま純の部屋に向かった。純の部屋は二階の一番奥にあり、南向きの大きな窓がある部屋だった。
直人は躊躇することもなく、当たり前のように純の部屋へ入った。電気をつけ、綺麗に片付けられた純の部屋を見回してみる。
見覚えのある本や漫画が所せましと並んでいた。サッカーの大会でもらったメダルやトロフィ、学校の課題で描いた水彩画、修学旅行でふざけて買った木刀まで飾ってある。
ここにある物全部を直人は知っている。ここに置いてある物にまつわる純のエピソードも、一語一句間違わずに言う事ができる。
直人は切なすぎて笑うしかなかった。二人で助け合って生きていたあの頃は、もう遠い昔のことで、でも、二人の大切なエピソードは何があっても消えたりはしない。
直人は倒れ込むように、純のベッドに横になった。
…純、俺、もう疲れたよ。
ふと、窓の方を見ると、純の部屋の大きな窓から川につながる森が見えた。直人はその窓を大きく開けてみる。もう日が沈んで真っ暗な世界になっているけれど、きっと、朝になれば素晴らし景色が見えるはずだ。
きっと、純もこうやって、ベッドの中から緑色に輝く森の景色を見ていたに違いない。直人はそう思うだけで、少しだけ純を近くに感じていた。