直人は鼻をすすりながら泣くのを必死に堪えている。

「俺のこんな姿を純は見たくなかったんだと思うよ……
 それに、もっとガキの頃だったら俺は立ち直れなかったかもしれない……
 十八歳の今でさえ、心臓をえぐり取られたようで何も考えられないのに……
 純は佑都の近くにいてくれたし、これからもずっといてくれるよ……」

 佑都は初めて直人達に涙を見せた。それも泣いてるのか笑ってるのか分からない。

「兄ちゃんはこれで、やっと、船橋にも遊びに行けるね。直人兄ちゃん達が迎えに来てくれたんだ……」

 直人は複雑な思いで胸が痛かった。和美も佑都も、純との思い出を少しずつだけど整理し始めている。
 みんな、それぞれの純との思い出がある。でも、直人はそれを完全に終わった事として受け入れられない。純は死んでしまったのかもしれないけれど、でも、まだ純が死んだなんて信じられない。
 直人はその場にいてその場にいないような感覚だった。自分の肉体を置き去りにして、直人の魂は純の魂を探し求めているみたいに。
そして、直人は膝を抱えて、声を殺して泣いた。
 …純、どこにいる? 純に会いたいだけなのに。