「兄ちゃんが死んでから、僕や母さんは全く兄ちゃんの存在を感じなくなったんだ。
夢にも出てきてくれないし、ましてや第六感的なものを感じる事も全然なかった。
亡くなって二年目の命日に、母さんと、兄ちゃんは船橋に帰ったのかもしれないねって話をして泣いたことを覚えてる。
僕達のそばにはもういないのかもしれないって……
でも、その時、母さんが、純は忙しい子だから行く所がいっぱいあるのよって言ってくれて心が救われたんだ」
和美は涙を拭いながら、佑都の話を聞いている。
「でも、今、直人兄ちゃんの話を聞いて、兄ちゃんはこの場所にいて直人兄ちゃん達が来るのを待ってたんだって分かった。
ねえ、そうだよね?
兄ちゃんは僕達の近くにいてくれたんだよね?」
佑都はすがるような目で直人にそう聞いてきた。
「…う、うん、そうだよ。
あの時の純の顔は、よう!みたいな顔をしてた。久しぶり!、みたいな顔を。
あと、もし、純が魂になって船橋に来てたのなら、俺は絶対気づいてた…
でも、俺は何も知らなかったし、全く気づくこともなかった。だから、純は絶対に船橋に来てないし、俺達にも気づかれないようにしてくれてたんだ」