直人はそれ以上の事は言葉が詰まって何も言えなかった。佑都達の事を思えば気の利いた言葉の一つでもかけてあげたいけれど、今の直人にはそんな余裕さえなかった。
「よかった…」
佑都はポツリとつぶやいた。
「よかった? どうして?」
すずは佑都の言葉が理解できなかった。
「実は……
僕も、母さんも、じいちゃんも、兄ちゃんはこの場所にはいないんじゃないかって思ってたんだ。
病気になって入院してからも、兄ちゃんはいつも船橋の話ばかりしてた。帰りたい、楽しかった、僕の生まれ育った場所は船橋なんだって……
母さんは母子家庭だった我が家の事を考えて、日光へ引っ越す事に決めた。
僕はまだ小さかったし、母さんは兄ちゃんにつきっきりになるのを見越して実家に帰ってきたんだ。
兄ちゃんはその事はちゃんは理解してた。でも、船橋の街や友達の事を想っていつも泣いてた……
直人達は元気にしてるかなって……」
佑都は涙一つ見せずたまに笑顔を浮かべ、その話を続けた。