すずは、軒先の鳥の巣を写した写真を和美に見せた。
「この写真のこの場所も、ここに来る途中で見つけました。
まるで宝探しゲームをしているみたいに楽しかった。
大人になった純がどんな風にこの写真を撮ったんだろうって……あ…」
すずは自分でそんな事を言っておきながら、自分の言葉によって純が死んでしまったということを思い出してしまった。言葉に詰まったすずを見て、和美はすずの肩を優しく抱き寄せた。
「すずちゃん、ありがとう… こんなに素敵な話を聞かせてくれて…
純は写真を撮る事だけが楽しみだったの。
でも、ここに居る期間は短くて。
入院生活が長かったから…
ここに帰ってきた時は、佑都やおじいちゃんと、ほとんどがこの近くなんだけどね、写真を撮りに行くのを楽しみにしてた」
和美は小さな棚の引き出しの中から、純のデジカメを取り出した。
「懐かしいでしょ?
ここに収められた写真達は、私達の大切な宝物で純が生きてきた証なの。
直ちゃんやすずちゃんに送った写真は、その中でも純のお気に入りだった。
純は分かっていたのかもしれないね……
直ちゃんとすずちゃんが十八歳の春にここに来てくれるって」
すずはもう我慢できなかった。大粒の涙が次から次へと流れてくる。
「おばさん、ごめんなさい…
こんな事、言うべきじゃないのかもしれないけど…
でも、純に会いたかった……
本当は……
生きている元気な純に会いたかった…
ごめんなさい… ごめんなさい…」