直人は縁側に座り、遠くの空を眺めていた。じかに肌に触れる夜風の冷たさは、直人のほてった体を冷静にしてくれる。でも、純からの年賀状の経緯を聞いて、直人はまた息ができなくなる。
「おばさん…
実は、今日、不思議な出来事があって…
私と直人は、お互い純からの年賀状を六年分全部持ってきました。それもたまたまの偶然で、そしてこのハガキに載っている写真は純が写したものだっていう事も分かってました。
もし、この旅行で時間があるのなら、純にこの写真を写した場所に連れて行ってもらいたいねって、そんな話もしてたくらいで…」
すずはバッグの中から、大切にファイルに閉じた純からの年賀状を取り出した。和美も佑都も目を潤ませて、すずの話を聞いている。
「日光の駅からバスに乗ってここまで来たんですけど、バス停からの道が分かりにくくて、近くにあるお店のおばあさんに近道がないか聞いたんです。
地元の人が通る近道を教えてもらって、森に入ったら方向感覚を失うから、その時は上を見上げて黄色い花がないか探せばいいって…」
すずは慌ててそのファイルから、黄色い花が咲き誇る純からの年賀状を取り出した。