“未来の富樫直人へ
お前は今何をしてる?
きっとサッカーで活躍してるかな?
っていうか、未来の自分なんて全然興味ない
それより、ちょっと先の未来の俺は純と仲直りできてるか?
純のバカ野郎
なんで引っ越しなんかするんだよ
直人”
直人は分かっていた。自分がどんな事を手紙に書いたかを。あの頃、直人だけは先に純から引っ越しの事を聞いていた。悔しくて悲しくて、純とケンカをした。
仲直りなんてしていない。俺が勝手に怒って純を困らせていただけだから。
あの頃の自分が、せんだんの木の上から今の自分を見つめている。
大人になった今、直人が何をするのか見定めている。
直人は純の手紙を握りしめ、木下の前へ走り寄った。
「先生、この純の手紙、俺が純に届けます。確か、栃木の日光に越したんですよね?
俺、春休み中に純に会ってきます」
いつの間にか直人の周りには大野組のメンバーが集まっていた。
「俺も行くよ」
「私も行きたい」
こうやって、純の周りにはいつも人が集まってくる。
唯一無二の俺達の親友……
忘れる事なんか絶対にできない。