桜が咲くにはまだ早い三月のある日、富樫直人は母校の校庭から青空を見上げていた。我が母校、若葉台小学校はあの頃と何も変わらずに直人を迎え入れてくれる。
 この小学校を卒業してからあっという間に六年が経った。今日はあるイベントのために六年二組のメンバーがここへ集まる事になっている。
 直人は若葉台小学校を卒業し、そのままの地元の中学校に進んだ。そして、一昨日、地元の公立高校を卒業したばかりだ。久しぶりに会うクラスメートもそれぞれの高校の卒業式を終えて、今、ここにいる。

「直人、久しぶり」
「お~、元気だった?」

 若葉台小学校の校庭の奥にあるせんだんの木の前に、大人になった6年2組のメンバーが顔を揃えた。

「みんな、デカくなったな……
 学校の方から手紙が来て分かってるとは思うけど、本当はお前達が二十歳になった成人式の日にやるはずだったイベントを今日やる事になった」

 六年二組の担任だった木下は、身長はもちろん、顔つきや雰囲気まで変わってしまった可愛い教え子達を目を細めて見ている。