あれは、数年前に起きたことだ。
 僕の人生において、最大のしくじり。
 黒歴史だ。
 
 僕はこう見えて、パソコンにはこだわっている方だ。
 ゲーミングパソコンを使用している。
 だから、モニターも大きなものだ。
 当時は23インチのモニターを二台並べて、使っていた。

 その日も自室で、パソコンデスクに座り、執筆していたところ。
 奥さんがノックして、部屋に入ってきた。

「味噌くん。悪いんだけど、今から娘たちの写真を選んで、モニターに写してくれない?」
 この時、娘たちはまだ2、3歳の保育園児だ。
 家族の写真は、スマホで撮影したものをパソコンにて管理している。
「わかった。なんに使うの?」
「保育園に提出したいの。可愛いのを選んでね♪」
「うん」

 それから、奥さんは自室から立ち去り、子供たちと遊んでいた。
 任された僕は、しばらく子供たちのファイルを眺める。
 一人につき、6枚ずつ候補を出して、奥さんに選んでもらうつもりだった……。

 デスクトップに並ぶ、可愛い娘たち。
 だが、そこに紛れていたのだ。先日、保存していた他の子が……。

 僕は再度、奥さんを自室へと招き、娘たちの写真をダブルクリック。
 あとはキーボードの→クリックを押すだけ。
 一枚、一枚。二人で候補を絞る。

 しかし、最後の写真を見終わったあと。
 奥さんが。
「ねぇ。もう一度、最初から見直して良い?」
 と言った。
 僕は「もちろん」と頷いて、→ボタンをクリックした瞬間。

 可愛い我が子ではなく、知らない成熟したチアガールのコスをした爆乳娘が現れた。
 23インチの大画面にフルスクリーンでだ。

(んぎゃあ! しまった。昨日、デスクトップに保存しておいたグラドルだ)

 僕の右隣に立っている奥さんと言えば、急に我が子から、知らないグラドルになったので、鋭い目つきに変わっていた。
 先ほどまでニコニコと笑っていたのに、一瞬にしてその場が凍りつく。

「なにこれ……?」
「え、えっと……」
 僕が回答に困っていると、奥さんが冷たい声で呟く。
「ねぇ、こういうの好きなの?」
「まあ……たまに」
「ふーん」

 無言のプレッシャー。
 生きた心地がしなかった。

「ところで、味噌くんは“これを”保育園に提出できると思う?」
「できない……です」
「だよね? 早くうちの娘たちに戻してくれる?」
「はい」

 それからの僕は早かった。
 問題のグラドル写真は、一旦削除。
 そして、娘たちを再度モニターに映し出す。

 保育園には、無事に可愛い我が子の写真を提出できましたとさ。

 ムフフな写真はちゃんと別のファイルに、隠しましょう。

  了。