推測だか妄想だかは知らないが、蜷川家に纏わることを調べてもらえるのはありがたい。響は仕事で思うように動けないし、蘇芳は交流がないからわからないと言っていた。成子の実家の園山家は、外務大臣増長の縁故。現園山家当主も跡取りも政治家だったと記憶している。広く情報を集めるにはうってつけの存在だ。

「わかった。では危険のないよう慎重にな。身辺警護は必ず付けろよ。必要なら憲兵隊から人を送る。くれぐれも、無茶はするな」
「ありがとうございます」

 頭を下げ、成子は静かに書斎を去って行く。それと入れ替わるように、今度は蜜豆と白玉が現れた。

「聞いていたな。今後お前たちも、多聞家に出入りする人間、由乃に接触しようとする人間に注意を払え。事件の可能性を捨てきれない今、用心に越したことはない」
「お任せ下され」
「御意」

 ふたりは頷き、すぐに「持ち場」へと向かった。