(まあ仕方ないか。弁当を持って行きたいと無理を言って作ってもらったのは俺だ。かさばっても文句は言えないな)
そう、ため息を吐いた途端、目の前の空間が歪む。蜜豆が現れる予兆だ。
「響様」
案の定、なにもない空間からヒョイと蜜豆が現れた……が、どこか様子がおかしい。いつも冷静な蜜豆の声が少し震えている。
「どうかしたか、蜜豆?」
「ええ。実は由乃が怪我をしましてな」
「……怪我……だと? どうして……いや、どのような怪我なのだ! 大丈夫なのか? どうなのだ?」
「落ち着かれませ。命に別状はございません。だが、足首を酷く痛めたようでな。自力で歩くのは当分無理なようじゃ」
命に別状はない、と聞いて響は一旦ほっとした。が、すぐに心配で堪らなくなった。どういう状況でそうなったのか、怪我をした足はちゃんと治るのか、と不安が渦巻いて止まらない。
しかし、まずは状況確認、そう思い冷静さを装った。
「なにがあったのか、説明してくれ」
尋ねる響に、蜜豆は頷いて返すと、事の次第を伝えた。園山成子が尋ねてきたこと、その成子と帝都観光に出掛けて暴走馬車にはねられそうになったこと、を。
「俺のいない間に、面倒事が起こったようだな。いや、それよりも問題は暴走馬車の件だ! 今までそんな話はなかったのだが……馬が暴れた原因を探ったか?」
「もちろんじゃ。我と白玉で現場に行き、人々の話に耳をそばだてておりました。そこで耳にした話によると、乗合馬車の近くに、数人の怪しげな男たちが近付いてきたらしくての。直後、馬が暴走を始めたという」
そう、ため息を吐いた途端、目の前の空間が歪む。蜜豆が現れる予兆だ。
「響様」
案の定、なにもない空間からヒョイと蜜豆が現れた……が、どこか様子がおかしい。いつも冷静な蜜豆の声が少し震えている。
「どうかしたか、蜜豆?」
「ええ。実は由乃が怪我をしましてな」
「……怪我……だと? どうして……いや、どのような怪我なのだ! 大丈夫なのか? どうなのだ?」
「落ち着かれませ。命に別状はございません。だが、足首を酷く痛めたようでな。自力で歩くのは当分無理なようじゃ」
命に別状はない、と聞いて響は一旦ほっとした。が、すぐに心配で堪らなくなった。どういう状況でそうなったのか、怪我をした足はちゃんと治るのか、と不安が渦巻いて止まらない。
しかし、まずは状況確認、そう思い冷静さを装った。
「なにがあったのか、説明してくれ」
尋ねる響に、蜜豆は頷いて返すと、事の次第を伝えた。園山成子が尋ねてきたこと、その成子と帝都観光に出掛けて暴走馬車にはねられそうになったこと、を。
「俺のいない間に、面倒事が起こったようだな。いや、それよりも問題は暴走馬車の件だ! 今までそんな話はなかったのだが……馬が暴れた原因を探ったか?」
「もちろんじゃ。我と白玉で現場に行き、人々の話に耳をそばだてておりました。そこで耳にした話によると、乗合馬車の近くに、数人の怪しげな男たちが近付いてきたらしくての。直後、馬が暴走を始めたという」