帝都のほぼ中心地にある多聞家から、馬車で行くこと十五分。
景色は、モダンな街並みから立派な日本家屋が多い地区へと移り変わる。
翡翠会館の建つ辺りは、議員や大臣などの住宅があり一際閑静である。常に憲兵が常駐し、帝都の中でも一番の治安のいい場所だ、と響から説明を受けた由乃は、興味深く夕暮れの街並みを眺めた。
「ああ、見えてきたぞ。あれが翡翠会館だ」
響が指差す方を見ると、そこには信じられないくらい美しい建物があった。
公園のように広い敷地の中に、存在感たっぷりに佇む緑色の館。煌々とライトで照らされた館は、本物の翡翠で作られたかのように煌めいて、ここが日本ではないような錯覚に陥らせる。
しかし、馬車が館に近付くと、実は緑ではないとわかった。白壁に所々、緑のタイルが埋め込まれていて、遠くから見るとライトの光で、全体が緑色に見えるという仕組みだったのだ。
数多くの来客の馬車が連なり、順番に玄関から入場していく。入り口では簡単な検査と、招待状の確認がされるようだ。由乃たちも同じく馬車から降りて、所定の手続きを済ませ中に入った。外観は緑だったが、内部は木材の良さを生かした、クラシカルな作りだった。絨毯は品のあるワインレッドで柱や扉は木製。外観は洋風、中は和風、互いの文化を中和させた贅沢な建物だ、と由乃は感動した。
洋装の男性と洋装の女性が、丸テーブルの周りで歓談している。外国の人と日本の人の比率は半々のようで、そこかしこから不思議な言語が聞こえてくる。響と鳴と由乃は、中央を抜け、人の少ないテーブル近くの壁際に陣取った。すると、どこからか金髪の紳士がやってきて、鳴に挨拶をした。鳴は流暢に異国の言葉を返し、微笑みながら談笑を始める。
「英国の仕事相手のようだ」
響が由乃に言った。
景色は、モダンな街並みから立派な日本家屋が多い地区へと移り変わる。
翡翠会館の建つ辺りは、議員や大臣などの住宅があり一際閑静である。常に憲兵が常駐し、帝都の中でも一番の治安のいい場所だ、と響から説明を受けた由乃は、興味深く夕暮れの街並みを眺めた。
「ああ、見えてきたぞ。あれが翡翠会館だ」
響が指差す方を見ると、そこには信じられないくらい美しい建物があった。
公園のように広い敷地の中に、存在感たっぷりに佇む緑色の館。煌々とライトで照らされた館は、本物の翡翠で作られたかのように煌めいて、ここが日本ではないような錯覚に陥らせる。
しかし、馬車が館に近付くと、実は緑ではないとわかった。白壁に所々、緑のタイルが埋め込まれていて、遠くから見るとライトの光で、全体が緑色に見えるという仕組みだったのだ。
数多くの来客の馬車が連なり、順番に玄関から入場していく。入り口では簡単な検査と、招待状の確認がされるようだ。由乃たちも同じく馬車から降りて、所定の手続きを済ませ中に入った。外観は緑だったが、内部は木材の良さを生かした、クラシカルな作りだった。絨毯は品のあるワインレッドで柱や扉は木製。外観は洋風、中は和風、互いの文化を中和させた贅沢な建物だ、と由乃は感動した。
洋装の男性と洋装の女性が、丸テーブルの周りで歓談している。外国の人と日本の人の比率は半々のようで、そこかしこから不思議な言語が聞こえてくる。響と鳴と由乃は、中央を抜け、人の少ないテーブル近くの壁際に陣取った。すると、どこからか金髪の紳士がやってきて、鳴に挨拶をした。鳴は流暢に異国の言葉を返し、微笑みながら談笑を始める。
「英国の仕事相手のようだ」
響が由乃に言った。