それは、晩餐会への招待状だ。増長誉。敏腕な政治家で、外務大臣である彼は、諸外国との外交の場に「翡翠会館」という会場を建設した。その場所では、外国の要人のみならず、政治家、軍人、裕福な経済人などを招いて、定期的に晩餐会を催している。陸軍憲兵中佐であり多聞財閥の次期当主である響も、何度か招待状をもらったことがあるが、今まで一度も応じてはいない。数世紀のうちにすっかり人に馴染んだ誉と違って、響は未だに人が苦手だったからだ。
しかし、今回は行ってもいいと思っていた。翡翠会館は、贅を尽くした美しい洋館である。瞳を輝かせて列車を眺め、帝都の町並みを、馬車の中から食い入るように見つめていた由乃なら、きっと興味を惹かれるに違いない。
響はふっと笑った。この気持ちがなんなのかは知らないが、由乃のことを考えていると、心が凪ぐ。
(また、白玉に笑われるだろうか)
と、顔を顰めながらも、喜ぶ由乃を思い浮かべて、幸せな想像をやめられない響であった。
しかし、今回は行ってもいいと思っていた。翡翠会館は、贅を尽くした美しい洋館である。瞳を輝かせて列車を眺め、帝都の町並みを、馬車の中から食い入るように見つめていた由乃なら、きっと興味を惹かれるに違いない。
響はふっと笑った。この気持ちがなんなのかは知らないが、由乃のことを考えていると、心が凪ぐ。
(また、白玉に笑われるだろうか)
と、顔を顰めながらも、喜ぶ由乃を思い浮かべて、幸せな想像をやめられない響であった。