誕生会にあたって由乃がしたのは、バースデーケーキと料理を作ったこと以外にない。しかしそれは仕事の一環であって、特別お礼を言われるものでもないはずだ。
「うん。僕は改めて由乃にお礼を言いたい。由乃が食膳に添えてくれた手紙が、少しずつ心を軽くしてくれた気がするんだ。中庭の花のこと、旬の野菜のこと……他愛もない話だったけど、それが逆に胸に沁みて、さ。あと、美味しい料理と糠漬け! 人間って、美味しいものを食べると問答無用で幸せになるんだね。僕が外に出る勇気をくれたのは、由乃、君だよ」
「奏様……そこまで、言っていただけるようなことはしておりません」
あまりの買い被りに、恐縮しながら反論した。
「ありがとうございます」と、使用人としてはそう返すのが正解かもしれない。でも由乃は、意識していないことで褒められるのは、なんだか居心地が悪かった。そんな由乃の側に鳴がやって来た。
「なにもしていないだなんて、誰も思っていないわ。三年も出て来なかった奏を、引っ張り出したのは由乃よ。否定しようとも、私たちはみんなそう信じている。だから、お礼を言わせて?」
「鳴様……」
「そうじゃ。いくらで使用人契約を結んだのかは知らぬが、給金を三倍ほど上げてもらってよい働きぞ?」
「給金?」
蜜豆の言葉に由乃が首を傾げると、全員の視線が響に向いた。
「ま……まさか……響様……給金の提示をしていなかったのですか」
鳴が恐る恐る尋ねた。
「うん。僕は改めて由乃にお礼を言いたい。由乃が食膳に添えてくれた手紙が、少しずつ心を軽くしてくれた気がするんだ。中庭の花のこと、旬の野菜のこと……他愛もない話だったけど、それが逆に胸に沁みて、さ。あと、美味しい料理と糠漬け! 人間って、美味しいものを食べると問答無用で幸せになるんだね。僕が外に出る勇気をくれたのは、由乃、君だよ」
「奏様……そこまで、言っていただけるようなことはしておりません」
あまりの買い被りに、恐縮しながら反論した。
「ありがとうございます」と、使用人としてはそう返すのが正解かもしれない。でも由乃は、意識していないことで褒められるのは、なんだか居心地が悪かった。そんな由乃の側に鳴がやって来た。
「なにもしていないだなんて、誰も思っていないわ。三年も出て来なかった奏を、引っ張り出したのは由乃よ。否定しようとも、私たちはみんなそう信じている。だから、お礼を言わせて?」
「鳴様……」
「そうじゃ。いくらで使用人契約を結んだのかは知らぬが、給金を三倍ほど上げてもらってよい働きぞ?」
「給金?」
蜜豆の言葉に由乃が首を傾げると、全員の視線が響に向いた。
「ま……まさか……響様……給金の提示をしていなかったのですか」
鳴が恐る恐る尋ねた。