誕生会当日の由乃は大忙しだ。
料理の準備と、なにより、本日の目玉であるバースデーケーキを作るという大事な仕事があったからだ。奏のほうの準備もあったが、それは厳島と鳴に任せておく。
三年ぶりの兄との邂逅、ちゃんとした礼装で会いたいと言った奏のために、鳴は帝都の一流テーラーを呼び寄せ、急いで新しい服を作らせた。奏は脱ぎ着しやすい洋装が普段着なので、開襟シャツとズボンをセットで購入し、これから積極的に外出するためにと、替えの服も揃えた。
多聞家の最新設備を駆使し、由乃は手早く仕事を行う。たまに厳島が来てくれて、卵を混ぜたり、粉をふるったりと雑用を手伝ってくれたので、とても時間短縮になった。
そうして午後四時前、バースデーケーキが仕上がり、料理の準備が整った。
奏は食堂の隣の部屋に身を潜め、由乃たちは玄関で響の帰りを今か今かと待っている。
すると、玄関の外で馬車の止まる音がした。厳島が畏まって扉を開けると、響が大きな背を屈めながら、馬車から降りてきた。
「おかえりなさいませ、響様」
厳島の声に合わせ、由乃も頭を下げた。
「ああ。いつも留守を任せてすまないな」
「いいえ。とんでもございません。では、早速ですが食堂へご案内します、どうぞ」
料理の準備と、なにより、本日の目玉であるバースデーケーキを作るという大事な仕事があったからだ。奏のほうの準備もあったが、それは厳島と鳴に任せておく。
三年ぶりの兄との邂逅、ちゃんとした礼装で会いたいと言った奏のために、鳴は帝都の一流テーラーを呼び寄せ、急いで新しい服を作らせた。奏は脱ぎ着しやすい洋装が普段着なので、開襟シャツとズボンをセットで購入し、これから積極的に外出するためにと、替えの服も揃えた。
多聞家の最新設備を駆使し、由乃は手早く仕事を行う。たまに厳島が来てくれて、卵を混ぜたり、粉をふるったりと雑用を手伝ってくれたので、とても時間短縮になった。
そうして午後四時前、バースデーケーキが仕上がり、料理の準備が整った。
奏は食堂の隣の部屋に身を潜め、由乃たちは玄関で響の帰りを今か今かと待っている。
すると、玄関の外で馬車の止まる音がした。厳島が畏まって扉を開けると、響が大きな背を屈めながら、馬車から降りてきた。
「おかえりなさいませ、響様」
厳島の声に合わせ、由乃も頭を下げた。
「ああ。いつも留守を任せてすまないな」
「いいえ。とんでもございません。では、早速ですが食堂へご案内します、どうぞ」