元治は、なにがなんでも華絵を鬼神様のお嫁様にしたかったようだ。多聞財閥の支援を期待したのだろうか? それとも名誉のためか? どちらにしろ、浅ましいことだと恥ずかしく思う。蜷川家の先祖と、父と母が守ってきた大切なものを汚された気がして悲しかった。
「あ、ごめんなさいね。由乃の親戚を悪く言ってしまって」
沈む由乃を慮って、鳴がシュンとする。
「い、いいえ! お気になさらないで下さい。こちらこそ、本家の者がとんだ失礼をしてしまい、申し訳なく思います」
「やはり……由乃は蜷川本家の者とは質が違ったのね。響様が連れて帰るはずだわ」
「えっ、と。どういう意味ですか?」
「鬼神って人間の良し悪しがわかるみたいなの。どういう風に見えるのかはわからないけれどね。だから、悪心を持った人には極力近付かない。もし由乃に悪心があれば、ここに連れてくるわけがないの」
鳴の言葉によってどんどん謎は解けていく。蜷川家の応接間で、響が由乃を凝視していたのは、見極めだったのだ。自分がよい人間だとは思わないが、少なくとも、元治や華絵よりは清廉で正しい自信がある。それを神である鬼神に証明されて、心の底から嬉しく思った。
「響様は、とても強い力をお持ちなのですね」
尊敬を込めて由乃が言うと、鳴は困ったように微笑んだ。
「そうね。だからこその悩みもあるのだろうけど……」
「え?」
「……いいえ。なんでもないの。さてと、私は部屋に戻るわ。仕事でお昼は戻らないから、また夕餉で会いましょう」
「はい!」
「あ、ごめんなさいね。由乃の親戚を悪く言ってしまって」
沈む由乃を慮って、鳴がシュンとする。
「い、いいえ! お気になさらないで下さい。こちらこそ、本家の者がとんだ失礼をしてしまい、申し訳なく思います」
「やはり……由乃は蜷川本家の者とは質が違ったのね。響様が連れて帰るはずだわ」
「えっ、と。どういう意味ですか?」
「鬼神って人間の良し悪しがわかるみたいなの。どういう風に見えるのかはわからないけれどね。だから、悪心を持った人には極力近付かない。もし由乃に悪心があれば、ここに連れてくるわけがないの」
鳴の言葉によってどんどん謎は解けていく。蜷川家の応接間で、響が由乃を凝視していたのは、見極めだったのだ。自分がよい人間だとは思わないが、少なくとも、元治や華絵よりは清廉で正しい自信がある。それを神である鬼神に証明されて、心の底から嬉しく思った。
「響様は、とても強い力をお持ちなのですね」
尊敬を込めて由乃が言うと、鳴は困ったように微笑んだ。
「そうね。だからこその悩みもあるのだろうけど……」
「え?」
「……いいえ。なんでもないの。さてと、私は部屋に戻るわ。仕事でお昼は戻らないから、また夕餉で会いましょう」
「はい!」