「お、お口に合ってよかったです」
由乃が笑うと、犬はスタスタと目の前まで来て、きちんと座り直して言った。
「ありがとうな! オレの通名は「白玉」。蜜豆と同じ、鬼神様の神使だぜ。昨日から見ていたが、お前やっぱりいい匂いがするなあ? なんだろう、この匂い」
「糠床だそうだ。しかし、故郷に置いて来てしまったらしくてのう。取りに行きたくても遠くて無理なのじゃ」
蜜豆が白玉の背に乗り、説明する。
「糠床か。美味しい漬物がたくさん出来ているんだろうなあ……うーむ。食べたい!」
「そうだろう? じゃからの、我らで取りに行かぬか? お前なら匂いを辿れば簡単じゃろ」
「おう! では、すぐ行こう!」
神使たちは盛り上がっている。しかし由乃はハラハラしていた。蜷川家のある本郷までは、列車で半日以上、そこから馬車で二時間かかる。鬼神の神使に一日のほとんどをかけて、取りに行ってもらうなんて申し訳ない。事態を知った響に怒られやしないかと気が気じゃなかった。
「それでは、由乃。しばし待て」
「ちょっと行ってくるぜ、待ってなよ」
「え、ええ? あの、待って……」
由乃が止めるも、蜜豆と白玉は勢いよく厨房から出て、そのままフッと姿を消した。
厨房に残された由乃は、呆気に取られて厳島を見る。
「大丈夫でしょうか? 私の実家はかなり遠いのですけど」
「心配ありません。白玉様の鼻と、蜜豆様の機動力があれば、十分もかからないでしょう」
(十分で? そんな馬鹿な……いや、でも、神使様の力を人間の物差しで測ってはいけないわ。蜜豆様と白玉様が自信を持って言うのだから、信じて待つべきだわ)
由乃が笑うと、犬はスタスタと目の前まで来て、きちんと座り直して言った。
「ありがとうな! オレの通名は「白玉」。蜜豆と同じ、鬼神様の神使だぜ。昨日から見ていたが、お前やっぱりいい匂いがするなあ? なんだろう、この匂い」
「糠床だそうだ。しかし、故郷に置いて来てしまったらしくてのう。取りに行きたくても遠くて無理なのじゃ」
蜜豆が白玉の背に乗り、説明する。
「糠床か。美味しい漬物がたくさん出来ているんだろうなあ……うーむ。食べたい!」
「そうだろう? じゃからの、我らで取りに行かぬか? お前なら匂いを辿れば簡単じゃろ」
「おう! では、すぐ行こう!」
神使たちは盛り上がっている。しかし由乃はハラハラしていた。蜷川家のある本郷までは、列車で半日以上、そこから馬車で二時間かかる。鬼神の神使に一日のほとんどをかけて、取りに行ってもらうなんて申し訳ない。事態を知った響に怒られやしないかと気が気じゃなかった。
「それでは、由乃。しばし待て」
「ちょっと行ってくるぜ、待ってなよ」
「え、ええ? あの、待って……」
由乃が止めるも、蜜豆と白玉は勢いよく厨房から出て、そのままフッと姿を消した。
厨房に残された由乃は、呆気に取られて厳島を見る。
「大丈夫でしょうか? 私の実家はかなり遠いのですけど」
「心配ありません。白玉様の鼻と、蜜豆様の機動力があれば、十分もかからないでしょう」
(十分で? そんな馬鹿な……いや、でも、神使様の力を人間の物差しで測ってはいけないわ。蜜豆様と白玉様が自信を持って言うのだから、信じて待つべきだわ)