鬼神には、人の徳を表す色が見える。蜷川家に来た時、迎えに出てきた華絵の色は暗い灰色、元治の色は黒に近い灰色だった。徳は低い。輔翼の家であるのに、天に見放されそうな徳の低さに、正直驚いた。輔翼の家は、鬼神との信頼関係によって繁栄を約束されているが、人の道に背くような行動を重ねれば、やがて加護を失い没落する。本家の者であるならば、それを知らないはずはないのに、反対の行動を取っている蜷川家に違和感を覚えた。
元治や華絵と比べて由乃の徳は、信じられないくらい高かった。
蓮は神仏と縁のある花。内にそれを秘め、輝く銀色の光を纏う人間を、響はこれまで一度も見たことがなかった。
(徳の高さは、神に近い、か。人の身でなんと珍しい)
響は由乃に興味を持った。一刻も早くここから帰りたいと思っていたが、思わぬものを見付けてしまい、一気に気分が高揚した。鬼神である響は、徳の低い者があまり好きではない。徳とは善行により積まれるもの。それが低いのならば、悪行を繰り返しているということで、近くにいるだけで気が滅入る。しかし、由乃の側に来た途端、快晴の青空のような清々しい空気が満ちた。
(不思議な娘だ。しかし、なんという粗末な身なりだろうか。遠縁にしろ使用人にしろ、こんな薄汚れたものを着せておくなんてどうかしている。他の使用人は、それなりの衣服を纏っているというのに……)
元治や華絵と比べて由乃の徳は、信じられないくらい高かった。
蓮は神仏と縁のある花。内にそれを秘め、輝く銀色の光を纏う人間を、響はこれまで一度も見たことがなかった。
(徳の高さは、神に近い、か。人の身でなんと珍しい)
響は由乃に興味を持った。一刻も早くここから帰りたいと思っていたが、思わぬものを見付けてしまい、一気に気分が高揚した。鬼神である響は、徳の低い者があまり好きではない。徳とは善行により積まれるもの。それが低いのならば、悪行を繰り返しているということで、近くにいるだけで気が滅入る。しかし、由乃の側に来た途端、快晴の青空のような清々しい空気が満ちた。
(不思議な娘だ。しかし、なんという粗末な身なりだろうか。遠縁にしろ使用人にしろ、こんな薄汚れたものを着せておくなんてどうかしている。他の使用人は、それなりの衣服を纏っているというのに……)