響は一旦考えるのを止めた。由乃が天女であろうがなかろうが、愛しいと思う気持ちに変わりはない。由乃の、作物や植物に干渉する力は、確かに天からの賜り物の可能性がある。だが、そんなことは関係ない。逆にそんなもので、響の由乃に対する気持ちは片付けられない、とまで考えていた。

「響様? いかがなさいました?」

 ヨネは不思議そうに響を覗き込んでいる。

「いや。なんでもない。ヨネ、話してくれてありがとう。今夜はもう帰れ。由乃は俺がみていよう」
「あ、はい。ではお先に失礼します」
「帰り道は暗くて危ない。白玉を護衛に付けるから、一緒に帰るといい」
「まあ……ご配慮、感謝いたします」

 呼ばれた白玉は姿を現し、ヨネと共に部屋から去った。響はヨネが腰掛けていた椅子に座り、由乃の寝顔を眺めた。
(さて……なんと伝えればよいものか。想いを告げるという行為が、こんなにも難しいなんて思いもしなかったな)
 響は苦笑いをしながら、由乃の頬に触れる。ほんのりと温かい熱が指先から伝わり、響を幸せな気持ちにした。