由乃の身の内にあるのは、美しい蓮の花。夢の話だとしても、その一致は偶然では済まされない。そんな響の動揺には気付かず、ヨネは続ける。
「夢を見てから数週間後、美幸様はご懐妊なさいました。それを天の神様の啓示だと信じた美幸様は、授かったお子様を、清く正しい人間に育てなければいけないと……それが自分の使命だと、常日頃から仰っておりました」
「清く正しく、か。その通りの娘に育ったな。しかし、その夢が真実だとすれば、由乃は何者なのだろうな」
「美幸様の言を借りれば『天女』でしょうか?」
「天女……」
天女とは、恵と豊穣をもたらす存在。気紛れに地上に降りては、作物に祝福を与えるという。天が人の願いを聞き入れ、降臨させたとでもいうのだろうか? そんなことが起こりうるのだろうか? と、響は思案する。
考えを巡らせる中、そういえば……と思い出した。最初に人間の女に惚れて現身を欲した友が、その伴侶を「天女」かもしれない、と言っていたことを。
(もしかしたらあいつにも、愛した女性の身の内に、花が見えていたのかもしれない。蓮の花ではなくとも、心を惹かれる美しい花が……)
しかし、それは想像でしかない。聞こうにも、友、持国鷹臣は、自社の船で世界を周遊中である。国一番の造船会社を経営している持国は、ほぼ日本にいることはない。神使を用いて連絡を取る手段はあるが、なにかと勘繰られるのは嫌だったのだ。
「夢を見てから数週間後、美幸様はご懐妊なさいました。それを天の神様の啓示だと信じた美幸様は、授かったお子様を、清く正しい人間に育てなければいけないと……それが自分の使命だと、常日頃から仰っておりました」
「清く正しく、か。その通りの娘に育ったな。しかし、その夢が真実だとすれば、由乃は何者なのだろうな」
「美幸様の言を借りれば『天女』でしょうか?」
「天女……」
天女とは、恵と豊穣をもたらす存在。気紛れに地上に降りては、作物に祝福を与えるという。天が人の願いを聞き入れ、降臨させたとでもいうのだろうか? そんなことが起こりうるのだろうか? と、響は思案する。
考えを巡らせる中、そういえば……と思い出した。最初に人間の女に惚れて現身を欲した友が、その伴侶を「天女」かもしれない、と言っていたことを。
(もしかしたらあいつにも、愛した女性の身の内に、花が見えていたのかもしれない。蓮の花ではなくとも、心を惹かれる美しい花が……)
しかし、それは想像でしかない。聞こうにも、友、持国鷹臣は、自社の船で世界を周遊中である。国一番の造船会社を経営している持国は、ほぼ日本にいることはない。神使を用いて連絡を取る手段はあるが、なにかと勘繰られるのは嫌だったのだ。