「過ぎたことを悔いても仕方ない。これは天罰だろう。だが、これでは事件の全貌が有耶無耶だ。主犯が錯乱と死亡ではどうしようもない」
「いいえ。それに関しては問題ありません。馴染みの車夫に化け、由乃さんを廃工場へ連れて行った男、そいつは組織の幹部だそうで、詳しい情報を持っていました」
「口を割ったのか?」
「ええ、案外根性がなくて、ちょっと脅したら簡単に。男によると、組織は金目当てで加担したらしいですよ。華絵と佐伯はかなりの金銭を持っていたようで、すぐに協力関係が築けたようです」
その金の出所は、蜷川徳佐が経営していた会社の資金や、本家の貯蓄だ。由乃の継ぐべきものを全て奪い、その金を由乃の命を奪うことに使う。悪鬼も顔負けの所業に、響は腹立たしい思いでいっぱいになった。
「ふん……金に釣られて、貧乏くじを引いてしまったようだな。これで組織は解散、不味い飯の監獄生活が待っているのだから。そうだ、蜜豆、白玉」
響は神使たちに目を向け、続けて言った。
「華絵と佐伯を追っている時、悪鬼の気配はあったか?」
「微かに感じはしましたが、かなり弱く、オレの嗅覚でギリギリ感じ取れるくらいです。蜜豆はどうだ?」
「そうじゃなあ、我は奴らに纏わり付く黒い煙のようなものを見た。白玉が言うように微かなものじゃ。あれ自体が悪鬼ではないようだが、邪悪な気配は感じたぞえ」
「やはり、大悪鬼が関わっているか……」
そして、その根源、大悪鬼に取りつかれている人間は蜷川元治だろう。と響は付け加えた。
「至急由乃の故郷に向かわねばならない。蘇芳、来週なにか大きな予定は入っていたか?」
「週明けに軍部大会議が一件と、大規模演習が……週末なら休んでも問題ないかと」
「では週末に向かうとしよう。蜜豆と白玉もその心づもりでいてくれ」
「御意」
蜜豆と白玉は頷いた。
その後、調書の作成を蘇芳に任せ、響と神使たちは多聞家に戻った。
「いいえ。それに関しては問題ありません。馴染みの車夫に化け、由乃さんを廃工場へ連れて行った男、そいつは組織の幹部だそうで、詳しい情報を持っていました」
「口を割ったのか?」
「ええ、案外根性がなくて、ちょっと脅したら簡単に。男によると、組織は金目当てで加担したらしいですよ。華絵と佐伯はかなりの金銭を持っていたようで、すぐに協力関係が築けたようです」
その金の出所は、蜷川徳佐が経営していた会社の資金や、本家の貯蓄だ。由乃の継ぐべきものを全て奪い、その金を由乃の命を奪うことに使う。悪鬼も顔負けの所業に、響は腹立たしい思いでいっぱいになった。
「ふん……金に釣られて、貧乏くじを引いてしまったようだな。これで組織は解散、不味い飯の監獄生活が待っているのだから。そうだ、蜜豆、白玉」
響は神使たちに目を向け、続けて言った。
「華絵と佐伯を追っている時、悪鬼の気配はあったか?」
「微かに感じはしましたが、かなり弱く、オレの嗅覚でギリギリ感じ取れるくらいです。蜜豆はどうだ?」
「そうじゃなあ、我は奴らに纏わり付く黒い煙のようなものを見た。白玉が言うように微かなものじゃ。あれ自体が悪鬼ではないようだが、邪悪な気配は感じたぞえ」
「やはり、大悪鬼が関わっているか……」
そして、その根源、大悪鬼に取りつかれている人間は蜷川元治だろう。と響は付け加えた。
「至急由乃の故郷に向かわねばならない。蘇芳、来週なにか大きな予定は入っていたか?」
「週明けに軍部大会議が一件と、大規模演習が……週末なら休んでも問題ないかと」
「では週末に向かうとしよう。蜜豆と白玉もその心づもりでいてくれ」
「御意」
蜜豆と白玉は頷いた。
その後、調書の作成を蘇芳に任せ、響と神使たちは多聞家に戻った。