「まず……廃工場の火災は延焼もなく、完全に鎮火しました。近くの消防団がいい働きをしてくれましてね」
「そうか、被害が広がらなくてよかった。で、華絵と佐伯はどこにいる?」
「ええ。まあ、それがですね……」

 困った顔をした蘇芳は、蜜豆と白玉に視線を向ける。するとふたりは、我関せずというようにそっぽを向いた。

「ああもう! 結論から言うと、華絵は錯乱状態、佐伯は死亡しまして……病院と霊安室におります」
「はあ⁉ いったいどういう経緯でそうなったのだ?」

 牢の中に、その二名がいないのが気になっていた。だが、まさか、そんな事態になっているとは思いもしなかったのだ。

「詳しく説明しますと、犯罪組織のアジトの裏路地で、華絵と佐伯を発見した蜜豆様と白玉様は、真の姿になって彼らに襲い掛かったのです。お二方の姿を目の当たりにした華絵は恐ろしさのあまり錯乱し、佐伯は我先にと逃げようとして大通りに走り出した途端、馬車鉄道に轢かれて……そうですよね! 蜜豆様、白玉様?」
「う、うむ。だいたいそうじゃな」
「ま、間違いない」

 神使のふたりはびくびくしながら響を見た。ほどほどにと言われておきながら、華絵と佐伯から証言を取れない状態にしてしまった。それで響の勘気をこうむるのが怖かったのだ。しかし響にしても、華絵と佐伯を殺したいほど憎んでいたのは事実。愛しい由乃を苦しませ、傷付けたのは許しがたい。もし、今、彼らが生きて目の前に現れたなら、冷静でいられるかどうかはわからなかった。