正しく伝わっている、と安堵し、由乃はこくりと頷いた。真実を聞いた響は、わかっていたかのように表情を変えなかった。が、しかし、瞳は金色に光っている。幾度か響の鬼神化に遭遇して、由乃はその特性を学んだ。感情が昂ると、鬼神の瞳は金色に光るのだ。暴走馬車で由乃が怪我した時も、そして今も……響はかなり怒っているのだろう、と思った。
 しばらくなにかを考え込むように、響きは黙り込んだ。部屋を沈黙が包み、由乃の緊張も増す。
 その時、空間を切り裂いて、部屋に蜜豆が現れた。

「響様、今戻り……おお! 由乃、由乃っ! 無事であったかー」

 寝台で微笑む由乃を見て、蜜豆はたんっを床を蹴る。そしてそのまま、由乃の膝に乗ろうとし……寸でのところで響に掴まれた。見事に首根っこを掴まれた蜜豆は、ぐうっ! と情けない声で鳴いた。

「なにをなさる響様!」
「なにをなさる、ではない。病人に体当たりを食らわせようとするな。馬鹿者」
「た、体当たりではございませぬっ! 喜びのあまり、抱きつこうとしただけで……」
「どうでもいい。で? 例の件はどうなったのだ?」

 響の真剣な表情に、ふざけていた蜜豆も真顔になる。それから綺麗に床に着地すると、畏まって言った。

「全て恙無く……今、軍の憲兵隊詰所の牢に、容疑者を捕えておりまする。白玉と蘇芳が見張りを」
「そうか。よくやった」
「しかし、一名が……」

 と、蜜豆が続けようとしたところで、響が止める。

「詳しくは詰所で聞こう。ここで物騒な話はよせ」
「……そうですな。では、行きますか?」
「ああ」

 短く返事をし、響は由乃を振り返る。