成子は肩を竦めた。
「確かにな。本家に住んでいたのだから……」
そこまで言って、響はあることを思い出す。由乃と同じくらい蜷川家の事情を知っていそうな人間がいたと。
「ヨネを呼ぼう。彼女は蜷川家の元使用人。ひょっとしたら、由乃よりも内情に詳しいかもしれない」
「あら! それならぜひとも!」
成子の了承を得て、響は厳島を呼び、ヨネを応接室に来させた。ヨネはおどおどとしながらやって来て、響の勧めるままに椅子に腰掛けた。不安げなヨネに、事の次第を説明する。すると「そうでしたか、私の知っていることならなんでもお話します」と協力的に答えてくれた。
「さて、それでは始めようか。成子嬢」
「わかりました。まず、これをご覧ください」
成子は茶封筒を響に差し出した。その中には、整然と書かれた細かい文字の書類が入っている。
「事故の調書か……由乃の両親のものだな。ええと蜷川徳佐と妻の美幸……ふたりの乗った馬車が谷底に転落し両親は即死、御者は全治一か月の骨折。原因は馬車の車輪が外れたこと……か……本当に突然だったのだな。由乃はさぞ辛い思いをしただろう」
両親が亡くなったのは三年前。当時由乃は十四歳だった。どれだけ泣き、どれだけ絶望しただろう。そう考えると胸が締め付けられる。響はふうと息を吐くと、次の書類を捲った。
「確かにな。本家に住んでいたのだから……」
そこまで言って、響はあることを思い出す。由乃と同じくらい蜷川家の事情を知っていそうな人間がいたと。
「ヨネを呼ぼう。彼女は蜷川家の元使用人。ひょっとしたら、由乃よりも内情に詳しいかもしれない」
「あら! それならぜひとも!」
成子の了承を得て、響は厳島を呼び、ヨネを応接室に来させた。ヨネはおどおどとしながらやって来て、響の勧めるままに椅子に腰掛けた。不安げなヨネに、事の次第を説明する。すると「そうでしたか、私の知っていることならなんでもお話します」と協力的に答えてくれた。
「さて、それでは始めようか。成子嬢」
「わかりました。まず、これをご覧ください」
成子は茶封筒を響に差し出した。その中には、整然と書かれた細かい文字の書類が入っている。
「事故の調書か……由乃の両親のものだな。ええと蜷川徳佐と妻の美幸……ふたりの乗った馬車が谷底に転落し両親は即死、御者は全治一か月の骨折。原因は馬車の車輪が外れたこと……か……本当に突然だったのだな。由乃はさぞ辛い思いをしただろう」
両親が亡くなったのは三年前。当時由乃は十四歳だった。どれだけ泣き、どれだけ絶望しただろう。そう考えると胸が締め付けられる。響はふうと息を吐くと、次の書類を捲った。