だが、それを言葉にはしなかった。今の華絵に反論しても、逆上させるだけだ。
「そう……それで、私に復讐したあとは……どうするつもりなの? 逃れられると思っているの?」
「もちろんよ。手筈は整えているわ。あんたを消したら、私は船に乗り日本を離れる。ね、捕まりっこないでしょう?」
「外国へ? そんな伝手がどこに……」
(ふたりは大規模な犯罪組織と手を組んだのかも。佐伯さんが悪事を働いて溜め込んでいたお金は相当あったのね。でないと、組織が手を貸すはずはないわ)
「じゃあ、そろそろ消えて。この世から、綺麗さっぱりとね」
「……華絵さん、考え直して。これ以上罪を重ねても、あなた自身が苦しむだけよ。今ならまだ……」
「ふ、ふふふっ、あははははは。馬鹿なの? あんたが生きていることが、私の苦しみなのよ」
そう言うと華絵は、背後の佐伯に目で合図を送る。すると佐伯は、由乃の背後からどこかへ移動し、戻って来て華絵の横に立った。彼はその手に、黒色の四角い缶を持っている。手の平より少し大きいくらいのものだ。
「これ、なんだかわかる?」
華絵が缶を指差した。
「……さあ」
「凄くよく燃える液体が入っているのですってよ。少し垂らすだけで、あっという間に燃え広がる液体燃料……名前、なんて言ったかしら、佐伯?」
「ガソリンです」
「あ、そうだったわね。これをね、ちょっと面白く使おうと思っているの」
「そう……それで、私に復讐したあとは……どうするつもりなの? 逃れられると思っているの?」
「もちろんよ。手筈は整えているわ。あんたを消したら、私は船に乗り日本を離れる。ね、捕まりっこないでしょう?」
「外国へ? そんな伝手がどこに……」
(ふたりは大規模な犯罪組織と手を組んだのかも。佐伯さんが悪事を働いて溜め込んでいたお金は相当あったのね。でないと、組織が手を貸すはずはないわ)
「じゃあ、そろそろ消えて。この世から、綺麗さっぱりとね」
「……華絵さん、考え直して。これ以上罪を重ねても、あなた自身が苦しむだけよ。今ならまだ……」
「ふ、ふふふっ、あははははは。馬鹿なの? あんたが生きていることが、私の苦しみなのよ」
そう言うと華絵は、背後の佐伯に目で合図を送る。すると佐伯は、由乃の背後からどこかへ移動し、戻って来て華絵の横に立った。彼はその手に、黒色の四角い缶を持っている。手の平より少し大きいくらいのものだ。
「これ、なんだかわかる?」
華絵が缶を指差した。
「……さあ」
「凄くよく燃える液体が入っているのですってよ。少し垂らすだけで、あっという間に燃え広がる液体燃料……名前、なんて言ったかしら、佐伯?」
「ガソリンです」
「あ、そうだったわね。これをね、ちょっと面白く使おうと思っているの」