必死で弁明する由乃の首元に、華絵は熱い蝋を垂らした。

「口答えは許さないって言ったわよね。言い訳も聞きたくない」
「……っ、は、華絵さん、ひとつ教えて。暴走馬車をけしかけたのはあなたの仕業なの?」

 由乃と成子が巻き込まれた事故。それは、事件かもしれないと響が言っていた。ひょっとしたら、由乃に復讐したい華絵が起こしたのかもしれない、と由乃は考えた。

「ええ。園山の目障りな女も、あんたも、纏めて始末しようと思って。蜷川家に残った全財産を使ってならず者を雇い、手筈を整え、私たちは姿を隠す。ふふ、全然わからなかったでしょ?」
「私たち?……ああ、なるほど。協力者がいたのですね。それは、佐伯さんですか?」

 由乃を羽交い絞めにし、椅子に引きずっていった人物。力の強さから男だとは感じていた。それが佐伯だったら納得である。会社や蜷川本家の財産を管理していたあの男なら、いくらかの隠し金で人を雇うことは可能であるからだ。

「そう、佐伯。彼もあなたに恨みがあるらしいわよ。だから、手を組んで復讐しようとしたわけ」
「恨み、ですって? 父の会社もなにもかもを思い通りにしたくせに、なぜ私が恨まれなくてはならないのですか!」