すると、数歩進んだところで、背後に誰かの息遣いが聞こえた。慌てて振り向こうとした由乃を何者かが羽交い絞めにする。
「だ、誰っ! は、なし……てっ!」
叫ぶも、体はなす術もなく引きずられていき、椅子のような場所に座らされた。それから、後ろ手に縛られ、体に縄を巻かれ、身動きが取れなくなった。
「いいザマね」
「え……その、声……は」
頭上から聞き覚えのある声がした。高圧的で蔑むようなその声は……。
「華絵さんっ?」
名前を呼ぶと、突然蝋燭の火が浮かび上がる。そこには思った通り、蜷川華絵の顔があった。
「久しぶりね、由乃。少し見ない間に、表情が豊かになったじゃないの。あんたのその怯える顔……堪らないわね」
「ど、うして。どうして、こんな……私をどうするつもりですか!」
「どうするって、ねえ? 私の人生を台無しにした罰を与えるに決まっているじゃない?」
「罰? では……復讐のために、本家から帝都に出てきた、と……」
本家から、華絵と佐伯が出て行ったと、ヨネが言っていた。それは、由乃への復讐のため……。だとしたら、かなり根深い恨みがあるのだろう。しかし、虐げられていた由乃が恨むのはわかるが、華絵から恨まれるいわれはない。
「私がなにかしたというのですか?」
言い返すと、華絵が手を振り上げ、平手で由乃の頬を打つ。パチンと乾いた音が辺りに響き、わずかな間反響した。
「あんたが鬼神と去ってから、うちはボロボロよ! お父様が突然失踪して、会社は倒産! 全部あんたが悪い、あんたのせいよ!」
「元治叔父様が失踪? それは私のせいでは……」
「うるさいっ! 口答えは許さないわ。本当なら私が鬼神のお嫁様になり、幸せになるはずだった! それなのに、あんたはまんまと鬼神を誑かして多聞家に入り込み、私の幸せを奪った! この、泥棒猫!」
「誑かしてなんていない! 響様は私に同情して、本家から連れ出して下さっただけ。それに、私、お嫁様になんて……っ!」
「だ、誰っ! は、なし……てっ!」
叫ぶも、体はなす術もなく引きずられていき、椅子のような場所に座らされた。それから、後ろ手に縛られ、体に縄を巻かれ、身動きが取れなくなった。
「いいザマね」
「え……その、声……は」
頭上から聞き覚えのある声がした。高圧的で蔑むようなその声は……。
「華絵さんっ?」
名前を呼ぶと、突然蝋燭の火が浮かび上がる。そこには思った通り、蜷川華絵の顔があった。
「久しぶりね、由乃。少し見ない間に、表情が豊かになったじゃないの。あんたのその怯える顔……堪らないわね」
「ど、うして。どうして、こんな……私をどうするつもりですか!」
「どうするって、ねえ? 私の人生を台無しにした罰を与えるに決まっているじゃない?」
「罰? では……復讐のために、本家から帝都に出てきた、と……」
本家から、華絵と佐伯が出て行ったと、ヨネが言っていた。それは、由乃への復讐のため……。だとしたら、かなり根深い恨みがあるのだろう。しかし、虐げられていた由乃が恨むのはわかるが、華絵から恨まれるいわれはない。
「私がなにかしたというのですか?」
言い返すと、華絵が手を振り上げ、平手で由乃の頬を打つ。パチンと乾いた音が辺りに響き、わずかな間反響した。
「あんたが鬼神と去ってから、うちはボロボロよ! お父様が突然失踪して、会社は倒産! 全部あんたが悪い、あんたのせいよ!」
「元治叔父様が失踪? それは私のせいでは……」
「うるさいっ! 口答えは許さないわ。本当なら私が鬼神のお嫁様になり、幸せになるはずだった! それなのに、あんたはまんまと鬼神を誑かして多聞家に入り込み、私の幸せを奪った! この、泥棒猫!」
「誑かしてなんていない! 響様は私に同情して、本家から連れ出して下さっただけ。それに、私、お嫁様になんて……っ!」