支援事業を始めてから数日後、仮設住宅が完成した。簡単な造りのものであったが、今まで地区の公民館で雑魚寝をしていた人々は喜び、口々に多聞財閥に感謝の言葉を述べた。火災で焼けてしまった家屋については、立て直しの資金として、出火元の化学薬品会社と政府がいくらか負担してくれる。だが、それでは全然足りないため、多聞財閥が低金利で融資することになったのだ。
また、配給のお弁当が大好評なことにより、本来の目的であった駅弁への参入も追い風になった。お金を出してでも買いたい、という人が数多く現れたのである。
そして、由乃は駅弁の献立も考えることになり、多忙だが、充実した日々を送っていた。
「さて、と。これでいいかしら」
神使たちや厳島の昼餉を作り終えてから、厨房の隅に置かれた小さな机の上で、由乃は献立作成に精を出していた。
「お疲れ様でございます。はい、お茶をお持ちしましたよ」
「ありがとう、ヨネさん」
「終わりましたか? 配給の分と駅弁の分、両方の献立なんて大変ですね。でも、由乃様が楽しそうなので、ヨネも嬉しゅうございますよ」
「ええ、とても楽しいわ。昔もお母様やヨネさんとお料理を考えたりしたわよね。懐かしいわ」
すると、ヨネは郷愁に浸るように目を伏せた。
「そうでございますね……あの経験が今に生かされているなんて、やはり、美幸様のご方針は正しかったのです。由乃様がひとりでも強く生きられるように、家事全般を教えて欲しいと、そう頼まれた時は驚きもしましたが」
「私も感謝しているわ。こんなちっぽけな自分でも、誰かの助けになれるのですもの」
「ちっぽけだなんて……由乃様はいつだって春の日差しのように、周りを温かくする方ですよ」
「ヨ、ヨネさんったら……あ、そうだわ。私、献立を工場に届けてくるわ」
また、配給のお弁当が大好評なことにより、本来の目的であった駅弁への参入も追い風になった。お金を出してでも買いたい、という人が数多く現れたのである。
そして、由乃は駅弁の献立も考えることになり、多忙だが、充実した日々を送っていた。
「さて、と。これでいいかしら」
神使たちや厳島の昼餉を作り終えてから、厨房の隅に置かれた小さな机の上で、由乃は献立作成に精を出していた。
「お疲れ様でございます。はい、お茶をお持ちしましたよ」
「ありがとう、ヨネさん」
「終わりましたか? 配給の分と駅弁の分、両方の献立なんて大変ですね。でも、由乃様が楽しそうなので、ヨネも嬉しゅうございますよ」
「ええ、とても楽しいわ。昔もお母様やヨネさんとお料理を考えたりしたわよね。懐かしいわ」
すると、ヨネは郷愁に浸るように目を伏せた。
「そうでございますね……あの経験が今に生かされているなんて、やはり、美幸様のご方針は正しかったのです。由乃様がひとりでも強く生きられるように、家事全般を教えて欲しいと、そう頼まれた時は驚きもしましたが」
「私も感謝しているわ。こんなちっぽけな自分でも、誰かの助けになれるのですもの」
「ちっぽけだなんて……由乃様はいつだって春の日差しのように、周りを温かくする方ですよ」
「ヨ、ヨネさんったら……あ、そうだわ。私、献立を工場に届けてくるわ」