「ちょうど鳴様から、お弁当に糠漬けを入れて欲しいと提案されていますので、それもお持ちしますね」
「ありがとうございます。では、のちほど!」

 ぶつん、と音がして電話は切れた。

「初日から大忙しですね」

 後ろに控えていた厳島が言った。

「そうですね。でも、なんだかワクワクしているのです。変ですよね」
「いえいえ。それはやる気が漲っている証拠。よいことです」
「あの、それで、大変申し訳ないのですが、昼過ぎに外出の許可をいただけますか?」
「もちろん、構いませんよ。人力車は手配しておきますから、自由に使って下さい」

 手回しのよい厳島にお礼を言うと、由乃はヨネの元へと駆け出した。ふたりで知恵を出し合って、みんなに美味しいと思ってもらえる献立を考えなくてはいけない。それも、短時間でだ。

「ヨネさん、水やりは終わった?」
「あ、由乃様、ええ、今しがた終わりました……どうしました? そんなに息を切らして……」
「献立を急いで考えなくてはいけなくなったわ。力を貸して!」
「まあ! それは大変です。では一緒に頑張りましょう」

 由乃とヨネは厨房に向かい、臼井から聞いた情報を共有する。それから、食材を書き記した紙を見ながら、主菜を決めて副菜を決めて、彩りや栄養面も考慮して考えていく。すると、あっという間に三日分の献立が出来上がった。