多聞家に来てから、糠漬けの需要が急に増えたので由乃は糠床を増やした。今では厨房に大きな桶が十ほど並んでおり、野菜の種類ごとに分類されて、いつでも食べられる状態になっている。
「助かるわ。これで夕食分からのお弁当は配給出来そうね。建築資材も急ぎで取り寄せているし……さて、今日は忙しくなりそうだわ!」
鳴はやる気に満ちた顔をして、新聞を畳んだ。それから、奏が起きてきて、昨日の火災の件を鳴に聞く。心配顔だった奏は、死者が出なかったことに安堵し、また、響の力の賜物だと偉大な兄を崇拝した。
鳴と奏が揃って家を出ると、次は響が起きてくる。昨晩は急な出動要請であったため、今日は少し遅めの出勤である。これは軍部上層部のみに許された特権だ。響は昨日の疲れを全く見せず、颯爽として現れた。手の甲に見える傷が若干痛々しいが、それ以外はいつもと同じである。
「おはよう」
「おはようございます、響様。傷の痛みはどうでしょうか?」
「痛みはない。お前の手当てのおかげだな」
「いえ、私の手当てなどほんの応急措置ですので、今日は必ずお医者様に見てもらって下さいね」
すると、珍しく響は少し嫌そうな顔をした。
「医者に診てもらう必要はないのだが……まあ、お前が勧めるなら仕方ない。軍医をしている友人に診察をしてもらうよ。おっと、もう昨日の火災が記事になっているのだな」
響は椅子に座りながら、食卓に置かれた新聞に目を落とした。
「助かるわ。これで夕食分からのお弁当は配給出来そうね。建築資材も急ぎで取り寄せているし……さて、今日は忙しくなりそうだわ!」
鳴はやる気に満ちた顔をして、新聞を畳んだ。それから、奏が起きてきて、昨日の火災の件を鳴に聞く。心配顔だった奏は、死者が出なかったことに安堵し、また、響の力の賜物だと偉大な兄を崇拝した。
鳴と奏が揃って家を出ると、次は響が起きてくる。昨晩は急な出動要請であったため、今日は少し遅めの出勤である。これは軍部上層部のみに許された特権だ。響は昨日の疲れを全く見せず、颯爽として現れた。手の甲に見える傷が若干痛々しいが、それ以外はいつもと同じである。
「おはよう」
「おはようございます、響様。傷の痛みはどうでしょうか?」
「痛みはない。お前の手当てのおかげだな」
「いえ、私の手当てなどほんの応急措置ですので、今日は必ずお医者様に見てもらって下さいね」
すると、珍しく響は少し嫌そうな顔をした。
「医者に診てもらう必要はないのだが……まあ、お前が勧めるなら仕方ない。軍医をしている友人に診察をしてもらうよ。おっと、もう昨日の火災が記事になっているのだな」
響は椅子に座りながら、食卓に置かれた新聞に目を落とした。