厨房で糠床の様子を見ていた由乃は、外から聞こえた物音に気付き顔を上げた。窓から見えたのは大きな荷車で、風呂敷が掛けられたなにかを運んできたようだ。荷車を引いてきたのは『みずのや』の法被をきた使用人の男である。料亭の使用人がどうしたのだろうと思っていると、そこにヨネがやって来た。
「みずのやさんが来たわ。なにを持って来たのか知っている?」
尋ねると、ヨネは呟くように話し出した。
「……ええ。先ほど華絵様から聞きました。なんでも……今夜、鬼神様がいらっしゃるとか。みずのやは、鬼神様にお出しするお膳を持って来たのでしょう」
「鬼神様……ふうん。おもてなしするのに、ヨネさんの料理じゃ役不足だとでもいうのかしら?酷い話よね」
「由乃様! 料理なんてどうでもいいのです! ヨネは……ヨネは……悔しいです! 鬼神様がいらっしゃるということは、華絵さまがお嫁様に選ばれたのではないでしょうか? 本来ならお嫁様になるのは、由乃様でしたのに!」
「みずのやさんが来たわ。なにを持って来たのか知っている?」
尋ねると、ヨネは呟くように話し出した。
「……ええ。先ほど華絵様から聞きました。なんでも……今夜、鬼神様がいらっしゃるとか。みずのやは、鬼神様にお出しするお膳を持って来たのでしょう」
「鬼神様……ふうん。おもてなしするのに、ヨネさんの料理じゃ役不足だとでもいうのかしら?酷い話よね」
「由乃様! 料理なんてどうでもいいのです! ヨネは……ヨネは……悔しいです! 鬼神様がいらっしゃるということは、華絵さまがお嫁様に選ばれたのではないでしょうか? 本来ならお嫁様になるのは、由乃様でしたのに!」