蜜豆が必死な様子で捲し立てる。それもそうか、と厳島は思った。そもそも、鬼神が現身で転生を始めた原因が「愛する感情」を知りたいと願ったから、だという。しかし、鬼神多聞は一度もそういった想いを感じたことがない。そう蜜豆や白玉から聞いていた。
「しかし……輔翼本家の娘でない由乃さんと結ばれたところで、次の現身は生まれないのではないですか?」
「そうじゃな。だが多くの民は、鬼神の存在も人知れず守護しているのも知らぬ。そやつらにとっては、いてもいなくても同じことじゃ。今まで支えてくれた輔翼の家の者には悪いと思うが、我らは響様が満足すればそれでよい。たとえ、これで現世と別れることになっても、な。厳島はどう思う? 次代の現身は必要と考えるかえ?」
「私は鬼神ではなく、多聞家にお仕えする身。響様の幸せを一番に願います。それに漠然とですが、由乃さんはこの家に光……をもたらす存在なのではと考えています」
それまでの多聞家がどうだったか、と厳島は改めて思い返してみる。閉じ籠ったままの奏、それを心配しながらも多聞財閥の仕事に振り回されている鳴。響は常に難しい顔をして、家にまったく寄り付かない。お互いの心がすれ違ったままの、絡まって解けない糸のようだ、と厳島は感じていた。
だが、由乃が現れてから、糸は少しずつ解けていった。それをどう表現していいのかわからず、厳島は「光」と言ったのである。
「光か……白玉は花の香りがすると言っておったのう」
蜜豆は白玉に視線を送る。
「しかし……輔翼本家の娘でない由乃さんと結ばれたところで、次の現身は生まれないのではないですか?」
「そうじゃな。だが多くの民は、鬼神の存在も人知れず守護しているのも知らぬ。そやつらにとっては、いてもいなくても同じことじゃ。今まで支えてくれた輔翼の家の者には悪いと思うが、我らは響様が満足すればそれでよい。たとえ、これで現世と別れることになっても、な。厳島はどう思う? 次代の現身は必要と考えるかえ?」
「私は鬼神ではなく、多聞家にお仕えする身。響様の幸せを一番に願います。それに漠然とですが、由乃さんはこの家に光……をもたらす存在なのではと考えています」
それまでの多聞家がどうだったか、と厳島は改めて思い返してみる。閉じ籠ったままの奏、それを心配しながらも多聞財閥の仕事に振り回されている鳴。響は常に難しい顔をして、家にまったく寄り付かない。お互いの心がすれ違ったままの、絡まって解けない糸のようだ、と厳島は感じていた。
だが、由乃が現れてから、糸は少しずつ解けていった。それをどう表現していいのかわからず、厳島は「光」と言ったのである。
「光か……白玉は花の香りがすると言っておったのう」
蜜豆は白玉に視線を送る。
