由乃は何度か寝返りを打つと、諦めて体を起こした。それから厨房へと移動する。部屋で悶々としているくらいなら、厨房でなにかをしていようと考えたのだ。もしかしたら、仕事を終えた響がお腹を空かせて帰ってくるかもしれない。夕餉も半分しか食べていないのだから、きっとなにか食べたいはず。そう思い、由乃は軽食を用意することにした。
おにぎりと漬物。深夜に食べても差し支えないくらいの量を作り終えると、由乃は食堂へと移動する。大きな柱時計が二回、重厚な音色を響かせると、音色の余韻が静けさの中に消え、また静寂がやって来た。しかし、その静けさは長くは続かない。玄関の扉を誰かが開けて入って来る音がしたのだ。
「響様かしら?」
慌てて食堂を出ると、向かってくる大きな影がある。
「由乃? お前、まだ起きていたのか?」
月明りに照らされた姿は響。無事でよかった……と、由乃は安心して胸を撫で下ろしたが、直後、彼の様子を見て愕然とした。
「お怪我をされたのですか⁉」
響のシャツは、ところどころ破れて朱色に染まり、焼けてくすんでいる部分もある。頬は汚れ、体からは火災臭が……。その姿だけで、現場がどれほど過酷だったのかを物語っていた。
おにぎりと漬物。深夜に食べても差し支えないくらいの量を作り終えると、由乃は食堂へと移動する。大きな柱時計が二回、重厚な音色を響かせると、音色の余韻が静けさの中に消え、また静寂がやって来た。しかし、その静けさは長くは続かない。玄関の扉を誰かが開けて入って来る音がしたのだ。
「響様かしら?」
慌てて食堂を出ると、向かってくる大きな影がある。
「由乃? お前、まだ起きていたのか?」
月明りに照らされた姿は響。無事でよかった……と、由乃は安心して胸を撫で下ろしたが、直後、彼の様子を見て愕然とした。
「お怪我をされたのですか⁉」
響のシャツは、ところどころ破れて朱色に染まり、焼けてくすんでいる部分もある。頬は汚れ、体からは火災臭が……。その姿だけで、現場がどれほど過酷だったのかを物語っていた。